営業マンにとって必要なヒアリング能力とは

個人のお客様が何かを買うとき、それは商品を買うのではなく、買った後のイメージを買うのだと、私は思います。例えば、経営者が個人用にベンツを買うときは、車という物体ではなく、「安心感、安全、ゆとりある自分、高いステイタス」というイメージに、お金を払っているのです。
ところが、同じ経営者が、会社で使う営業車を買うときは、使い勝手の良さ、耐久性、コストパフォーマンスなどを求め、中長期的な経営の立場に立って比較検討するはずです。同じ車でも、自分用に買うときは、燃費の良さよりイメージやステイタスを求めますが、会社の備品として買う場合は、コストや利便性が優先されるというわけです。商品に対して何を求めるか。これは、買い手によって全く違います。
だから、相手が何を求めているのか、そこに焦点を当てて話を聞き、それに合った売り方をすることが必要で、それを自然にできてしまう人が、天才営業マンなのです。
では、ここで応用問題です。例えば、パソコンソフトなどを、ある企業に売りに行く場合、あなたならそのソフトの、どんなメリットをアピールして売り込みますか?「法人営業の場合は、その法人にとってコスト削減や作業効率アップを売り込めばいい」と思っていたら、その営業マンは二流と言わざるを得ません。法人セールスの場合、お客様は、経営者と担当者の2種類があります。お客様が経営者の場合は、中長期にどれだけ利益が出るか、どれだけコスト削減ができるかが、買う動機になります。だから、これだけ利益になる、これだけコストがカットできるということをアピールして売ると良いでしょう。
一方、担当者にセールスする場合は違います。担当者には、次の2種類の人がいます。
①そのソフトを導入することによって、自分の仕事が楽になるなら買うという人
②そのソフトを導入することによって、自分が周囲から誉められる、自分の手柄になるなら買うという人
①の人にとっては、極端な話、コストパフォーマンスがどうであっても関係ない、自分の仕事が楽になればそれでいいのです。また、②の人にとっては、周りから自分の手柄だと認められるなら、そのソフトの費用や利便性は、二の次です。営業マンは、相手が何を求めるかによって、商品のどこを強調して売るか、そして提案書の書き方、プレゼンの仕方を変えなくてはいけません。
担当者の①の場合は、例えば「あなたの部署が楽になるから、お勧めします。もしよろしければ、会議用の提案書を作ってきますので、私の方からご説明しましょうか?」と言えば、「あぁ、君がやってくれるなら楽でいいね」と、とんとん拍子に話が進むかもしれません。
担当者の②の方であれば、「これを導入すると、あなたの部署の仕事効率が上がって、あたなが社内で評価されると思いますよ。もしよろしければ、こちらで会議用の提案書を作りますので、ご自分で提案されたらいかがですか?その提案書を作るために、打ち合わせしましょう」と持ちかけます。そして、相手によって提案書の中身も変えます。役員会でプレゼンするなら、コストパフォーマンスや、利益になるかどうかを主眼にし、部門会ならその商品の使い方や、作業効率がアップされることをポイントにするなど、相手に応じて書き分けます。誰に言われたわけでもないのに、ごく自然に、相手によって別々の提案書を用意し、中身の違うプレゼンテーションができる人。黙っていてもそれをしてくる天才的に営業センスの良い人が、ときどきいます。驚くべき才能だと思います。

お客様に対して、どんな聞き方、どんな質問をしたら、自分が知りたいことをお客様に答えていただけるかを分かっている人のことです。直接聞いたら角が立つような質問を、別の表現でうまく聞き出したり、このお客様ならどんな聞き方をすればいいか、別のお客様ならどういう質問をすればいいか、そういったことが、感覚で分かる人は天才です。
大半の営業マンはそれができないので、会社が、お客様に聞くべき質問をまとめたチェックリストを作ります。この仕事は、天才営業マンからヒアリングをして、マーケティング能力に長けた。経営企画の担当が行うことが多いです。そのチェックリストをもらった営業マンは、どうするか?
上の2割の営業マンは、チェックリストを棒読みにするのではなく、ロールプレイングなどの訓練をして、多少上手に聞きだすことができます。真ん中の6割の営業マンは、訓練をしないので棒読みに近い感じで聞くでしょう。下の2割は、棒読みそのもの。あるいは、聞くべき質問を忘れてしまうことさえあります。
これに対して、天才営業マンは、チェックリストを全く見ずに、すらすらと自分の言葉に置き換えてお客様に聞くことができます。雑談の流れで聞くなど、お客様に警戒心を抱かせることなく、要点をついた質問ができるのですから、こういう人はまさに天才。めったにいないかもしれません。