相手の立場を考える営業マン

営業マンにとって、お客様が買いそうか買わなさそうかを見極めるのは、もっとも肝心なことと言ってもいいでしょう。買う気のない相手に手間をかけるのは時間と労力のムダですし、買いそうなお客様を早く見切ってしまったら、大きな損失になります。「要らないよ」と言われても、お客様の雰囲気、状況によって、その言葉はいくらでも違うように解釈でき、その後の対応も変わってきます。
(A)「要らないよ」の言葉どおり、本当に要らない場合
(B)「要らないよ」と言って、実は利用方法や使い方の例を教えてくれれば、興味があるよという場合
(C)「要らないよ」と言いながら、実はとても興味があって、価格や支払い方法の提案をしてほしい場合
(D)「要らないよ」と、今のところ本当に買う気がないけれど、買う能力は充分にある場合
同じ言葉からでも、買うか買わないかの可能性を、雰囲気から見定めなくてはいけません。そして、どういう対応をするかも重要。
同じ「要らないよ」という言葉を受けても、それで終わりにするのではなく、何か質問をするなどして、その後の言葉を引き出し、お客様ごとに個別の提案をするのが大切です。また、いくら買う気があっても、買う能力のない人といつまでも話をしていても仕方ありません。
むしろ、営業マンなら、買う気がなくても、買う能力がある人と話をすべきです。「今、お求めいただかなくても結構でございます。ただ、こんな商品があるんだなという1つの情報として知っていただければいいので……」などと言いながら商品説明や他のお客様の事例を話します。「今、買わなくてもいい」という言葉で、まずはお客様に安心感をあたえます。その上でAさんは(A)という理由で買った、Bさんは(B)という理由で買ったと、違う理由で買ったお客様の事例を聞くことによって、あぁ、そういう理由なら共感できる、とお客様に思ってもらうことができ、契約につながることもあります。あるいは、商品についてたくさんの情報を話しておけば、誰かを紹介してくれることもあるかもしれません。
買う能力のある方のお友達は、やはり買う能力のある方が多いので、見込み客として有望です。ポイントは、買う能力のない人には時間を使わず、買う能力のある人に時間を使うということ。「買う能力」は「興味の度合い」よりも大事であることを、できる営業マンは知っています。

営業マンは、商品やサービスを売る仕事です。でも、「売る」という立場にだけ立って物を考えていては、お客様に受け入れていただくことはできません。
「売る」とは正反対の「買う」立場になって考えることのできる人が、営業センスのある人です。「買う立場」つまり、お客様になったつもりで、このサービスは魅力的か、この商品は便利か、この価格は妥当かなどを見つめ直すと、新しい発見がたくさんあるはずです。
また、提案書、企画書などの書類一つを作るにしても、ただ自分が言いたいことを一方的に羅列したのでは、相手にとって不親切で受け入れられないでしょう。それを見るのは誰なのか、その人はどんな情報がほしいのか、どんな点に魅力を感じるか、相手の立場に立った書類が作れる人はセンスがあります。
すべてに、「恕の精神」があることが大切です。「恕」とは、論語の「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」から来た言葉で、自分がして欲しくないことを人にしてはいけないという意味です。ここから転じて、相手がしてほしいことをする、相手の立場になって考えることが大切だということです。